NASとクラウド、保存先はどちらが良いか

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株式会社ベクターデザイン・エンジニアの猪飼(いかい)です。

先日、とあるお客様からこんな質問をいただきました。
「社内のデータは、ローカルのNASに保存するのと、クラウドに保存するのと、どちらが良いのでしょうか?」

※こちらの画像の生成には、Gemini Notebookを使用しています。

一見するとシンプルですが、奥が深いテーマです。

こちらのお客様は、とある製造会社でIT部門を統括されている方です。
IT機器に関する知識もご経験も豊富でいらっしゃる方です。
社内の情報セキュリティ体制の見直しをされるとのことでご相談をいただきました。

NAS屋さん(語弊がありますが)としては、「もちろんNASです!」と言いたいところですが。。
結論から言えば、NASとクラウドどちらか一方が優れている、ということはありません。

「何を守りたいか」「どんな事象を想定するのか」「その管理を誰が担うのか」

ICTの観点と、情報セキュリティマネジメントの観点、その両方から考えた時に、
「自分たちがどのように守りたいのか」を実現してくれるのは、果たしてどちらなのか。
それを判断した上で、保存先を選択するということが大切です。

IT・ネットワークから見る「NAS」

まずは社内に置くNASから考えてみましょう。
こちらの大きなメリットは、データが社内ネットワークにあること、です。
数十GB、数百GBといった大きなファイルを日常的に扱う場合、インターネット回線を経由するクラウドよりも、LAN上のNASの方が高速で、安定するケースは多いです。
また、インターネット回線に障害が発生しても、社内ネットワークが動いていればファイルへアクセスすることができます。
「近い・速い・インターネット回線に依存しない」といったところが強みでしょうか。

一方、NASを自社で管理している場合は、自分たちの役割になります。
機器の故障、ディスク交換、アップデート、アクセス権、バックアップ、ネットワーク設定、etc。
設定が不適切だったり、アップデートを長期放置したり、本体を安置する環境が悪いなど、
自分たちの管理方法それ自体が、場合によってはセキュリティリスクになり得ます。
さらに、本体とバックアップが同じ場所に置かれていた場合には、物理的な損害により全部一緒に失う、というリスクもあります。

IT・ネットワークから見る「クラウド」

ではクラウドなら安心でしょうか。
クラウドストレージの場合、物理的なサーバ、ディスク、データセンターなどの設備を自社で管理する必要がありません。
容量を増やすのも比較的容易です。
社外や自宅からアクセスしやすいというメリットもあります。
災害によって会社へ入れなくなっても、インターネットの利用さえできれば業務を継続できる可能性があります。
これはBCP、つまり事業継続という意味では非常に大きいメリットです。

一方、クラウドでは「責任共有モデル」という考え方が一般的です。
クラウド事業者はデータセンタやサーバなど、クラウド設備そのものを保護します。
アクセス権の管理、多要素認証の強制、退職者アカウントの削除、共有リンクの設定など、セキュリティ対策については依然として利用者側に残る責任です。
クラウドを採用する場合、社外からのアクセスを許可している場合が多いため、物理設備の管理は減る一方、ID・端末・外部アクセスなど別の管理がさらに重要になるといえるでしょう。

情報セキュリティとして考える

少し視点を変えましょう。
情報セキュリティでは、「機密性・完全性・可用性」の3つの観点で情報の取り扱いを考えます。

機密性
クラウドであれば、部署・人ごとに権限を分けるといった管理ができます。
NASであれば、それに加えて、そもそも社内LANからだけアクセスできるようにする、というような管理ができます。
またどちらも、多要素認証や端末制限、条件付きアクセス設定などを組み合わせて「誰がアクセスできるのか」機密性を確保することを考えます。

完全性
ファイルの上書き、ランサムウェアによる暗号化、データ削除などが脅威です。
前回の記事『セキュリティの焦点は「防御」から「戻せる」へ ―サイバーレジリエンス(Cyber Resilience)へのシフト―』(URL:https://qumowill.jp/column/5373/)でも取り上げましたが、過去の正常な状態へ戻れるか、という点も大切です。
NASであれば、スナップショット、イミュータブルスナップショットなど。
クラウドであれば、バージョン管理や削除保護、オブジェクトロックなど。
各ソリューションに備えられている機能に違いがあるので、どの手段を選択するか、機種選択も大切です。

可用性
NASにしかデータが無い場合、会社が被災したときには利用できない可能性があります。
クラウド上にしかデータが無い場合、インターネット回線に障害が起きた時に利用できないかもしれません。クラウド事業者の障害によりデータが破損したケースや作業ミスによりデータを誤削除されたケースも度々報道されています。
ここで考えないといけないのは、NASにせよクラウドにせよ、「保存する情報の可用性をどこまで確保するか」です。

「どちらに置くか」より前に考えないといけないこと

情報セキュリティマネジメントの観点で考えると、
「そもそも何のために情報を保存するの?」という本質に立ち戻ります。
情報セキュリティマネジメントの目的は、
「情報の機密性・完全性・可用性を維持し、情報に関するリスクを組織として適切に管理すること」です。

どの情報を、何から守り、どの程度失われないようにし、必要な時にどれくらい確実に使える状態にしておくのか。
これを組織として考えるのが、会社で情報セキュリティマネジメント体制を整える、ということなのです。
そして、無数にある目的達成の手段の一つとして、NASやクラウドにデータを保存する、という選択肢があるのです。

結局、どちらが良い?

お客様からの質問へは、下記のように返答をしました。

「何を保存するかによります。
保存容量やアクセス頻度、転送速度などを重視すればNASに利点が出やすく、
外部からのアクセス性や環境自体の保守の負担ではクラウドに利点が出やすいです。
ですが、誰にアクセスさせるかという機密性の問題でローカルにせざるを得ないこともあるし、
BCPの観点で、ローカルのNASをメインで動かしてバックアップをクラウドで取る方法もあります。
まずは、情報セキュリティの観点で、守るべき対象がどれなのかを整理し、情報資産として把握することが第一です。」

つまるところ、守りたい情報と必要な条件を決めてから、それを実現できる保存先を選ぶことが大事、ということですね。

弊社が考えるベストプラクティス。
主要の事業所にQumowill NASを設置し、日常業務ではそちらで運用し、バックアップをクラウド上に保存する。クラウド上のバックアップを一定期間ごとにアーカイブする。
これらを実施することで、高速かつ安全な運用を実現できます。

以上、NASとクラウドにまつわる実務の一例でした。
データの保存先に悩まれた際には、是非お気軽にご相談ください。

※こちらはQumowill NAS 月次レポート(2026年10月号)に掲載されたコラムと同様の内容です。