ループコーディングの普及と風雲たけし城の竜神池

筆者がまだ小学生だった頃、TBS系列で「風雲たけし城」というバラエティ番組が放送されていた。
一般応募で集まった出場者たちが、次々と立ちはだかる多彩なアトラクションを突破して、後の北野武ことビートたけしの「たけし城」を攻め落とすというコンセプト。
今で言うところの、「SASUKE」に近いようなバラエティ番組だったと記憶している。
そんな番組の名物アトラクションの一つに、「竜神池」があった。
Geminiによる説明。
内容: 池の上に置かれた飛び石を伝って、対岸へ渡り切るゲームです。
トラップ: 一部の飛び石にはバネが仕掛けられていたり、水面に浮いているだけの偽物が混ざっており、踏むと沈んで池に落ちて失格となります。
攻略のコツ: 安全な石を見極める冷静さと、万が一沈みかけても走り抜けて渡り切る運動神経と運が求められます。

画像引用:https://natalie.mu/owarai/gallery/news/19651/28087
なぜその話?
近年のAIを活用したループコーディングに、同じようなリスクが潜んでいるのではないかと感じたことが、このコラムの発端である。
AIを活用したソフトウェア開発は、開発会社のみならず、一般企業でも取り組むところが増えている。
今まで、プログラマに依頼しなければできなかったソフトウェア開発が、ClaudeやCodexといったAIサービスを活用することで、誰でも比較的手軽に行えるようになったことが、その普及を後押しした。
コミュニケーションロスの軽減
ループコーディング以前に、現場のスタッフが「必要だ」と感じるアプリケーションの開発を行うとしたら、どうなっただろうか?
まず、今困っている点や改善したい点などの要件を書き出し、ソフトウェア開発チームに提案を依頼する。(RFP)
それらを受け取ったソフトウェア開発チームは、提案書と見積を作成し、プレゼンテーションを行う。コストとメリットを天秤にかけ、良さそうであれば正式に依頼。そこから一定の期間を経てプログラムが完成し、テストを実施した上で利用を開始する・・
大まかにはこうした流れとなるが、各現場の思惑や認識の違いによって、開発が上手く進まないことも多い。
ソフトウェア開発チームが社外の企業であれば、なおさら話は複雑になる。
画像引用:C.アレグザンダ―・他著,B6判,203p,鹿島出版会,1977年12月
さらに、開発したソフトウェアにはメンテナンスも必要で、細々した修正を依頼するたびに時間とコストが消えていく。
それらのソフトウェアを、現場のスタッフ自身で開発できるようになったら、どんなに良いだろう?
それを実現するのが、AIエージェントによる開発である。
当初はコードエディタのインライン補完がメインで、「バイブコーディング」と呼ばれていたが、2026年に入ったころから自律的にタスクをこなすエージェント型が主流となり、「ループコーディング(ループエンジニアリング)」と呼ばれることが多くなった。
代表的なツール
よく活用されるツールはClaude Code(Anthropic)、Codex(OpenAI)が挙げられる。
このあたりの詳しい解説は、弊社CTOの松原氏に託したいと考える。
黎明期の空気と社会のギャップ
それらを含むAI技術の進化は、産業革命に匹敵するほどの大きな変化を社会にもたらしていると、筆者は感じている。「使いこなす」ことによって得られるメリットは大きく、IT黎明期を彷彿とさせる空気感も漂っている。
一方で、社会が求める「責任」の範囲は、以前よりも大きくなってきている。安心・安全やプライバシーに対する意識が高まり、監督責任や努力義務といった、個人だけでは対応が難しいテーマも増加している。
動くプログラムを作ることは、以前に比べて容易になったが、正常に動作するシステムを構築するための技術が普及しているとは言い難い。
先述の「竜神池」のように、開発という一歩には成功しても、その先の「浮石」に引っかかり、池に落ちてしまうケースがあるのではないかと感じた次第。
ドメイン知識と潜在リスク
ここ数年、「ドメイン知識」という言葉をよく耳にするようになった。
特定の専門分野や業界、業務領域に固有の知識や専門的なノウハウのことを指す言葉だ。先述の営業現場では、その業界に特化した営業スタッフが活躍していると想像される。
これはICTの業界でも同様で、システムを開発する際に必要な専門知識は数多く存在する。
ループコーディングが可能になり、ある程度の知識があればソフトウェア開発を行えるようになった今、ドメイン知識の不足から、思わぬリスクに直面した組織からの相談を受けることが増えている。
例1:情報漏洩リスクを発見
あるクリエイターが、Claude Codeを用いてAWS上に業務ツールを単独で構築した。
関連企業からの依頼で、コードレビューとシステムレビューを実施したところ、当該コードがGit上でPublic設定となっており、公開されていることが判明した。幸い情報の流出は確認されなかったが、アクセストークンなどもハードコードされている状態であった。
コードレビューでは、機密情報に相当するデータが平文で保存されているなど、複数の改善点が発見された。
例2:属人化リスク
ある総務系社員が、業務効率を改善するシステムをClaude Codeを用いて自社サーバ上に構築した。
その会社では開発を専門としておらず、開発規定なども整備されていなかった。そのスタッフは、テック系の掲示板などで周囲に質問をしながらシステムを構築した。構築後、接続していたコマースシステム企業からセキュリティ侵害の警告があり、弊社に調査依頼があった。調査の結果、システムに重大なセキュリティホールが存在していることが判明した。
セキュリティに配慮した開発の指導を依頼されたものの、当該社員が退職してしまったことにより、システム自体を凍結することになった。
例3:法令リスク
ある営業社員が、Codexを用いてGCP上に営業ツールを開発した。
システムの構築には成功したが、セキュリティに不安を感じたICT部署から弊社に調査の依頼があった。
調査の結果、ソースの管理体制に課題がある点、また当該システムが特定業界の法令に抵触する恐れがある点が発見されたため、開発体制とリリースについてのガイドラインを提案した。
どのケースにおいても、システム自体は正常に動作しているように見えることが共通点といえる。
しかし、潜在リスクがどの部分に存在するのか。それを見極めるためには多角的な検証が必要である。
そして、ここでひとつ、重要な事実に触れておきたい。
どの開発者も、各社でエース級の活躍をしている優秀な人材であったという点だ。
活力があり、有能な人材ほど新しいサービスやツールの導入に積極的な傾向がある。そうしたモチベーションを削ぐことなく、企業としての開発体制を構築していくことが、大きな課題と言える。
FDEという進め方
FDE(Forward Deployed Engineer:フォワード・デプロイド・エンジニア)とは、顧客の業務現場(最前線)に深く入り込み、AIや自社プロダクトを活用して、課題の発見から実装、運用、継続的な改善までを一気通貫で担うエンジニア職種である。(ZDNETより引用)
米国の軍需AI企業Palantir(パランティア)が確立したモデルで、単なるAIエンジニアリングに留まらず、「業務変革を推進し、成果を出すまで伴走する」ことを目指す。
現状、日本国内ではまだ「バズワード」として扱われていると言っても過言ではない。
10社10様、各社のコア・コンピタンスを活かす開発スタイル
弊社のQumowill AIでは、各社のコア・コンピタンスを活かした開発体制の構築を推奨しており、必要に応じた伴走型の支援サービスを提供している。
顧客のみならず、弊社内の課題解決やQumowill AIチームのノウハウを通じて培われた開発・運用の知見をもとに、ガバナンスの確立・効率の改善・属人化の低減という3つの課題を解決するサービスである。
【フルサポート型】
弊社独自のQumowill AI導入フローを活用し、技術動向の紹介、課題の抽出から必要なシステムの提案、PoCシナリオの作成、プロトタイプの構築・検証、効果測定までを経て、結果が良好であれば導入と実装を行う。
運用フェーズでは、サポートと継続的な検証を提供し、最新のAIサービスへのブラッシュアップを支援する。
【プロトタイプ型】
開発プロセスにおける初期のプロトタイプの構築は、顧客側で実施。
その後、プロトタイプのコードレビューとシステムレビューを行い、リリース可能な実装を弊社側で実施。
運用フェーズではSREサポートを提供する。チーム開発体制の整備や設計レビューなども、オプションとして対応可能。
貴社にはどのパターンが最適か?
ご相談などお問い合わせは弊社営業担当までお気軽にどうぞ。






